じたばた

27年勤めた会社からの脱出は成功するのか。じたばたしながら新しい自分を見出したい。

たまには書評を「ランチ酒 おかわり日和」

原田ひ香のランチ酒シリーズにはまっている。バツイチの女性が夜勤明けに昼間からおいしいものを食べ、お酒を飲むという短編集。そして意外に深いお話なのである。

 

 

ランチ酒のシリーズは3冊。主人公の祥子は子供を夫が引き取っていて独り暮らし。仕事は見守り屋という変わった職業で、お客の依頼で、ただただ一晩見守るというもの。

 

そこではいろいろなドラマが生まれ、祥子も巻き込まれ、心を痛めることもある。そんなとき、「今日は何を食べよう」とめぐりあった店で食べる料理とお酒は、ちょうどよく人の心の何かを洗い流してくれるのである。

 

今はノンアルコールがブームで、酔わない人々が増えているようだ。しかしお酒というのは、適度に飲めば、ほんとうに魔法のように気持ちを洗ってくれるお水なのだ。

 

焼き鳥丼には冷えたビール、スパゲティーグラタンにはレモンハイ、豚の角煮カツ丼には冷えたグラスと赤ワイン。もう、文字を見ているだけでくぅ~っとなる。

 

インスタ映えした写真などいっさいいらない。文字の力だけで十分だ。なんなら飲まなくてもいい。読んだだけで飲んで食べたように心の何かが洗ってもらった気になる。

こんな小説、あったかな。

 

まだ1冊しか読んでなく、図書館で借りたので真ん中の刊から読んでしまった。それでも連作短編のような作りなのであまり支障はなかった。これは文章が整っているせいだろう。

 

さまざまな登場人物の描写も、シンプルかつ繊細に表現されている。料理の描写もシンプルだが血が通っている。人が料理したもの、と言う目線を忘れていない。

 

だから冷やされたグラスも、表面カリカリの焼き鳥も、その延長線上にいる行き届いた料理人の存在を感じさせる。決して高級なものは食べてないのに。

 

そんなふうに癒された主人公はまた新しいお客様を見守り、また問題に巻き込まれる。そういうどこか「探偵小説」のようなループで、読者をひきつけているのだとしたら、ミステリー好きな私がはまるのは当然と言えば当然かもしれぬ。

 

 

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