(あらすじ)花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。遺体の第一発見者である孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の鉢植えが気になり、ブログにアップする。
読み始めから残り1/3まで一気にいってしまった。物語の導入からまるで術にでもかかったように取り込まれ、それこそ夢うつつになったように一心不乱に読みすすめた。
日本で一番有名な推理作家の東野圭吾が「こんなに時間をかけ、考えた作品はほかにない」と語ったこの作品。
思った通りおもしろかった。滑らかでリズミカルな文体は、読み手を小説の世界に魔法のように誘い込む。さすがとしか言いようがない。
ただし、そこには大きなリスクもある。そんなに強く引き込んでおいて、それ相応の結論があるに違いないと読者は期待するからだ。
その点においては、私が冒頭で「残り1/3まで一気に・・」と書いているように、その地点で立ち止まり一抹の不安も抱いたのも正直な事実。
つまり、全体としてはおもしろかったが、冒頭の興奮からすると、終盤の着地点が若干無難なものに思えるのは否めないと感じたから。
江戸情緒、みたいなものがうっすら流れていたが、ひょっとしたら好みが分かれる作品かもしれない。