その日、カーテン越しの日差しがすでに昼近いことに気づいてヒロは飛び起きた。
「・・やばい」
何度も鳴ったと思われるスマホのアラームだが、まったく役に立たなかった。
今日の試験を受けなければ、大学の進級が危ない。
ようやく目が覚めたヒロは、試験を欠席できる理由を検索する。大学の規約では公欠ならセーフとなる。
「インフルエンザはもう2回使ったし・・電車の遅れも無いし・・」
そこでヒロの目に「近親者の葬式」という項目が目に留まった。
「これだ!」
とりあえず黒っぽい服を着てヒロは家を飛び出す。会葬御礼を提出すれば公欠になるのだ。
一番近いセレモニーホールの、今から始まろうとする斎場に、コンビニで買った香典袋を持ってヒロは入り込んだ。
狭い部屋、受付も無い。どうしよう。5人ほど中にいた。いっせいにこちらを見る。いぶかしげにじっと見ている。
「しまった!。これは・・家族葬だった!」
すぐさまセレモニーが始まった。どこのだれともわからないやさしそうなおばあさんの写真が笑っている。
金縛りにあったように身動きできぬまま、家族葬は滞りなく終わった。すると息子さんと思われる中年男性が近づいてきた。
「あの・・」
「ぼ・・僕は頼まれた代理のもので・・」とヒロは噛みながら話す。相手の返事を待たず香典袋を手渡すと、そそくさと斎場をあとにした。
放心状態のヒロ。知らないおばあさんの家族葬に出て香典を渡してきた、などと誰に話せるだろう。
「ママしかいないな。」
結局ヒロは、ママと大学に呼び出されることが決定したのである。
・・・これは私の義理の甥のお話で、ノンフィクションです。
ある意味、天才ですよね。